経済学者や経済評論家の方々は極論ぶつのが好きですねぇ・・・ちょうど、よくメディアに登場されるとある経済学者(元官僚)の著書の抜粋記事が出ていたので、これに突っ込んでいこうかなぁと。
なんとなく気が向いたので。
読書感想文的にとらえていただければと
何を言っているのかを見ていく
全体を通すと「その通り」か「一理ある」と頷ける内容もあるんですが、実務的な実現性を考えていない、机上の空論という評価です。
それ今すぐやれば「解決ですね」ではなく、
「その理論、どうやって実践するの?」という内容かな。
日本はなぜコロナ禍でも消費税減税ができなかったのか
「消費税と社会保障を紐付けてしまったから」というのが、この先生の回答。
まぁ、それは事実ではありますけど、シンプルに、税金入る前提で支出(長期に及ぶものや借金返済も含め)を計画しちゃっているので、経済的活況を呼び込めるほどの大きな減税はできないと考えるのが妥当かと。
減税分何か支出を減らすことで穴埋めしないといけなくなる→支出を減らした先に対する金遣いが減ると今度はそこがお金が入って来ず困る。どこで困るかの違いだけで困ることは変わりない。
つまり、保険料徴収を消費税と紐づけていなければ
消費税減税はできたという主張は論理飛躍しているのでは?
という見解です。
税収を上げる方法は増税だけではない
これは多田野もいろんないのですが、具体例として挙げているものが・・・
「マイナンバー制度」と「インボイス制度」があるんだから、徴収漏れは防げる、税率アップより先にやることあるんじゃない?
というのがこの先生の主張で、これも総論はその通りだと思うのですが、
「マイナンバー制度」も個人情報が心配だ、等主張する抵抗勢力が一定数いてなかなか浸透しない。
「インボイス制度」もフリーランス等、導入反対を叫ぶ抵抗勢力が一定数いる状態(とはいえ、予定通り10月から施行される予定ですが)
という日本国民の受け取り方や世論を考えると、まぁ・・・いや、その考え自体は間違いじゃないし、そうであって欲しいと思っています。
お金の流れを透明化するという趣旨だと理解しましたので、これも多田野は異論ないのですが、
「マイナンバー制度」と同様の理由(国にお金の流れをすべて把握されるのは嫌、等)で相当数の抵抗勢力は発生すると思います。
また、電子マネーの提供手段は官製で新たに構築するのか?既存の民間電子マネーに対する取引履歴の強制提供等、法的な規制を加えるのか?といった各論部分の提示がされていません。
どこかで静止点を作って、一斉に制度を改定し、現在の現金(紙幣・硬貨)を電子マネーに置き換える必要があると考えますが・・・と考えると実現性は謎、です。
結論はそれも一理あると思うのですが、
今の高齢化・保守層が多い日本でどうやって実現するんだろう?
実現性にクエスチョンの付く提案なんですよね。
増税しなくても財源はある
ここでは、「歳出カットをしろ、建設国債を発行しろ、埋蔵金を使えばいいじゃないか」とのこと。
これも具体的なやり方は書いていないんですよね。読んだ人の大抵が「話は分かったけど、じゃあどうやればいいの?」という返しが来ておしまいではないかと。
次はハイパーインフレの話
経済的な理論は分かるのですが、これも論理が飛躍しているというか
「インフレはイヤ」「でも給料上げろ」は矛盾
んまぁ・・・そうですかね。
物価値上げですぐに騒ぎ立てるマスコミにうんざりという言葉も同意。物価上がることは悪いことだけではなく、その製品商品に係わっている企業や人達に、適正な対価を渡すことにもなります。
インフレ率と賃金の上昇率は並行して上がる
世界ではそうなのに、なぜ日本では賃金が上がらないのか、という主張が始まるわけですが、もっとシンプルに、お金が労働者に回ってこないから賃金が上がっていない、という事じゃないんですかね?
企業が内部留保していたりとか、物価上げを是としない風潮や世論とか、諸々の理由でお金が労働者に落ちてこないという理由じゃないですかね、と。
給料を上げるためには、日銀にたくさんお金を刷ってもらえばいい。
なんでこの結論に至るのかが謎。
「インフレでお金を刷れば、賃金が増える」という理屈ですが、「増えたお金が労働者に回って初めて賃金が増える」というのが多田野の理解。間がスポーンと抜けちゃってる。
日銀がいくらお金を刷っても、それが株や国債を買うお金に回ったり、将来を保守的に考えて企業が内部留保を厚くしたり、富裕層や一般家庭がタンス預金に回したりすると労働者にはお金が回ってこないこともありうる。
というか、そういうお金の流れが滞留しているので、今の状況になっているのではないかと。
一つ一つは理解できる主張もあるけど
単純明快に、「お金の出し方、回り方、使い方を工夫すれば問題解決に向かいますよ」という程度の話であれば「そうですね」とスッと落ちてくる内容なんですけど、「こうすれば大丈夫」と断じるので「え?どうやるの?」となる。
文章構成上これらをぶつ切りにして、いずれも「①知識披露フェーズ→②結論フェーズ」で組み立てているから、①と②の整合性や現実性に疑問が生じてくる、という流れにつながるのかなという感じですね。
このビジネスサイトでは全5回に分けて掲載されるようですが、
同じ突っ込みをすることになるんやろうなぁ
「それ、具体的にどうやれば実現できるんですか?」と。
ここに至った原因は、経済学の一端で語れるような小さな問題ではなく、社会心理学とか、制度以外の無形のモノも複雑に絡んだ結果だと、多田野は理解しています。
どうせやるならそれら要素も踏まえて、複合的に検証して実のある提案をしてほしいところです。
とはいえど、こういう問題提起をする事によって、問題自体が存在することを一人でも多くの人に働きかけて、問題意識を共有するという意義についてはあるとは思っています。
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