前澤友作氏の手がける業務のうちの一つである「arigatobank」。事業内容自体は珍しいものではありませんが、知名度あるカリスマ経営者だから成立する、割合とレアな会社だと思っています。
ビジネスモデルの解説(推測込み)
かなり大雑把ですが、arigatobankカード周りの関係を図にしてみました。
「株式会社カンム」について
arigatobankは「株式会社カンム」と提携して、arigatobankカードというプリペイドカード(バーチャル/リアル)を発行しています。
両社の契約関係は把握していませんが、カンムがarigatobankに対して、arigatobankカードの発行件数と利用金額に応じたインセンティブを支払う契約になっていると思われます。
肝心のカンムという会社は、プリペイドカードを発行し、そのカードがVISAの加盟店で利用されることによって、カード発行会社が受け取る手数料を分配してもらう事で収益を上げていることになります。
受取手数料のレートは低率(平均1%台の加盟店から得られる手数料を、イシュアーとアクワイアラとで配分する)ですので、薄利多売の商売といえます。
カードを持ってもらって、使ってもらって
ナンボの世界です。
「arigatobank」について
正直、「前澤じゃんけん」をやっている会社としか認識していない人が多いと思います。
(「じゃんけんがインチキなんじゃないか」とか言っているコメントも見かけましたが、配るお金の総額や倍率はあらかじめ決めて設定しているでしょうから、恣意的なことはしていないだろうと、多田野は考えます。)
決め打ち「お金は配られていない」
ここが結構重要だと思っていて、「お金配り」といわれていますが、じゃんけんで勝った結果得られる当選金は、実際には当選者に配られているわけではありません。
正確に言えば、当選金は配分はされていますが、実際に現金として引き出すことができないのです。
当選者が当選金を利用するためには、arigatobankカードを作成する必要があります。当選金をプリペイドチャージする形でVISAの加盟店で利用することができます。
VISAの加盟店で利用すれば、利用額に応じたキックバック(報奨金)も、カンムから受け取れます。
当選者が多いほど、arigatobankカード作成者が増え、
カンムから得られるインセンティブが増えることになります。
利用があれば、その分のキックバックも得られます。
これがarigatobankのマネタイズ(金融業界でいう「収益化」)モデルとなります。
「広告宣伝費がゼロ!」
タイトルにもありますが、このarigatobankカードの宣伝を、前澤氏のツイートなどを使ってお金を掛けずに実施できる事が、同社の最大の強みであり、マネタイズできる要因だと多田野は考えます。
薄利多売のビジネスモデルの為、
一般の人が会員になりたいと思う、余程のキラーコンテンツや、
コストがかからない仕組みを持っていないとマネタイズできません。
当選金は、現金で配布した場合は費用(広告宣伝費や販売促進費など)として、キャッシュアウトしなければなりませんが、カード利用しかできない為、資産或いは負債としてプールされます。
現預金→会員預り金に振り替え。利用されれば加盟店支払金として費用化。利用されなければ当選金の期限切れを持って戻し入れ・・・という形かな。
会計処理をカンム側が行うか、arigatobank側が行うかは
契約(委託範囲)次第だと思いますので、担い手はここでは割愛。
arigatobankの他の事業
なお、arigatobankには、寄付(クラウドファンディングの様なもの)の事業もあったと思いますが、こちらはマネタイズしていないでしょうし、金融屋さんとしてあまり興味がわかないので、ここでは割愛します。
あくまで前澤氏の経営資産ポートフォリオの一つ
肝心なことは、arigatobankは、数ある前澤氏の経営する会社の一つ、事業の一つであるという事です。
ここでは割愛とした寄付についても、前澤じゃんけんも、あるいは宇宙旅行すらも、SNS等で話題になる事によって、前澤氏の手掛ける数々の事業の宣伝になるので、今のところは相乗効果を発揮していると言えます。
自らの広告塔としての伸びしろや限界を
手を変え品を変えて試しているのかなと、理解しています。
物凄く楽しんでいる感がうかがえます。
今後についても、前澤氏がよほど世間から嫌悪されるような犯罪でも侵さない限り、自らを広告塔として使うビジネスモデルは成立すると思います。
その中の一つの手段として、金融業を選ばれたという事については、ウェルカム!という所ですね。
事業自体は既存のものの域を出ないので、目新しさはないですが、前澤氏という知名度抜群の宣伝素材がタダで使える点では、他には真似できないものを持っている会社です。
インセンティブ勝負なので、爆発的な儲けは期待できませんが、ある一定の収益は確保できるのではないでしょうか。
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